Quadrophenia: Live in London [DVD] [Import] (2014) Part2

バンド編成 通常のボーカル、ギター二人、ベース、ドラム、キーボード
にプラスが+キーボード二人、+ホーンプレーヤー二人の総勢10人編成の構成になっている。
私が97年5月に同じwembley arena で見た公演は15人編成で今回よりも5人も多い。ブラスセクション+3名、バッキングボーカル+1名、パーカッション+1名、キーボードは逆に−1名です。
今回のライブ全般に言えることはピートのアドリブが冴えわたっており、1曲1曲のめりはりが強くついていることです。97年のピートは存在感こそありましたが、派手にアドリブをするようなプレイはありませでした。ピートがギタリストとして復活したのは1999年のことであり、この頃はまだ復活前だったことあるだろうし、15人編成ではあまり自由が利かなかったのかもしれません。それでも今回10人編成ですから、アドリブはそんな簡単なことではないと思いますが、それを簡単にやっているのは驚きです。サポートミュージシャンが相当、苦労したと思います。(笑)
ピートのプレイスタイルはもともとオリジナリティの高いものでしたが、このアドリブの入れ方は最近、変化してきているのではないでしょうか。さらにオリジナリティを増してまさにアンタッチャブルです。今月あったケニー・ジョーンズ(85年のライブエイド以来の競演??)のチャリティコンサートでもI Can't Explain 、5:15は派手に演奏しています。特に5:15はサポートの3人が何していいか分からずにかわいそうに固まっている時間帯があります。
Rock 'n' Horsepower Concert 5:15
ピートはオリンピックのときの肥満度は見るに耐えないものがありましたが、このときは約1年後、少しやせているようです。その1年後のケニーのチャリティではさらにやせています。若いときはスリムでしたが、今は立派な体格をしていますので、これでやせていれば、髪は無くとも十分、格好いいですね。
ロジャーのコンディションについてですが、喉の手術前の不安定さと比べると、最近はいつでも一定のコンディションを保っているようです。しかしながらこの日はツアー最終日でありながら、ほとんど喉もかれていなくて、集中が半端でなく、ツアーの中でもベストのひとつだったのではないでしょうか。最近のどすを聞かせたような歌唱法も自然になってきています。リアル・ミーの冒頭はどうもテープの声のようですが、それが正解だと思います。1曲目の出だしから大声はりあげたら、喉によくありません。
DVDの音質についてですが、ブルーレイよりもDVDの方が家の中で対応しているドライブも多いし、廉価だというだけで選んだわけですが、結局最初は自分の部屋に放置してあるPCを普通のオーディオケーブルで重低音スピーカーにつないである3万円代のミニコンポで視聴しました。重低音スピーカーの効果は絶大でドラムとピノのベースの低音が響いてきて、音もクリアで、コンサート会場にいるような気分にもなりました。最近のライブのDVDはこれほどの質があるのかと感動し、ツアーごとにDVDを出し定評があるのはラッシュだということで、サマータイムブルースやシーカーのカバーをして、親しみも比較的あり、リーダーのGeddy Lee おそらく他のメンバーもフーのファンで特に曲作りにおいてはピートに一番影響を受けている言っており、2012年カナダで初めてピートに会ったときは「あなたがフーの曲を作っていなければ私は今こうしていなかった」発言したほどです。そのラッシュの2013年11月に発売されたClockwork Angels TourのDVDも購入して、比較しようとしたが、ライブのDVDはやはりこのレベルだろうという範囲内で、全く音質は比べようがありませんでした。
このDVDの一番の注目はドラマーかもしれません。Scott Devours はロジャーのバンドでトミーを全曲演奏したくらいですので、Quadrophniaでフーをサポートするのは大変プレッシャーだったと思いますが、技術的には問題ないはずです。2012年4月の大阪公演で実際に演奏を聞きました。そのときは可もなく、不可もなく程度の印象でした。ザックはフーのサポートを16年以上やっており、今やバンドに不可欠の存在です。ほとんどのフーのファンはザック以外のドラムではフーは成り立たないし、聞きたくないと考えているはずです、私も含めて。最初はかなり抵抗がありました。ザックのあの几帳面な叩き方にし親しんでいるだけに、勢いで叩くスタイルは。インストロメンタルの曲は印象が比較的弱いのはやはり、ドラムが原因でないかと思ったりもします。全般に必死で演奏しているのが伝わってきます。ボーカル曲ではすべて問題なく、ババ・オライリーなど逆にザックよりも迫力ある演奏をして、それにピートが絡んだりして、面白くなっている箇所もあるし、you better you betはザックだったらもっと最初から聞かせてくれると思ったり、WGFA(無法の世界)のドラムソロはザックの進化しているのと比べると、かわいそうであるが、さすがに差がある。それでも曲が終わると全く不満足で終わる曲がほとんどないのは、かなりバンドになじんだ演奏ができている証拠ではないでしょうか。コンサートレビューで評価が良かったのは決して、お世辞ではなかったことが分かりました。オフィシャルHPでは新しいメンバーシップオファーが最近届いており、50ドルかかりますが、このような動きがあったことで今年後半から予想されているワールドツアーが現実になりそうですが、その時はドラムが仮にザックでなくスコットであったとしても私は行くこととしました。どちらかと言えばザックの方が当然いいわけですが、贅沢かもしれませんがスコットのフーも一度聞いてみたい気分になりました。
ショーの演出と各曲について
メンバーの写真、戦争、戦後の各ニュースの記事は写真、動画等をピックアップして編集した映像とライブ映像を切り替えながらの進行。Hiroshimaまで出てくる。あくまでも演奏が主役で補助的なものであるが、合格点はあるだろうとの評価。80年代のベルリン崩壊まで出てくるのが理解できませんでした。すごく良かったわけではないが、違和感はあまりなかった。5:15もジョンの演出も時間が長かったが、曲としては前後の演奏で十分補えていた。ベルボーイのキースの演出もこの暗い、鬱な曲が並んでいる曲群の中で数少ない清涼剤でした。The Real Meは迫力満点バージョン。The Dirty Jobsではサイモンがボーカル、結構いい声ですね。これからのライブでも1曲、歌うのではないかと予想。Helpless Dancerのロジャー、ピートの掛け合いながら渋いボーカル。Cut My Hairなどピートの語り部のようなボーカルが格好いいです。ピートにしては珍しく、声がこの日は枯れていますが。I've Had Enoughの途中でのマンドリンのような音が入る変な転調部分もいつも抵抗を感じるが今回は楽しんで聞くことが出来た。Sea And Sandも5:15に全くまけないほどの迫力の展開、1時間20分歌い続けた後のLove Reign O'er Meはロジャーにとっては大変な負担のある曲だが、必死に歌い上げるロジャーは感動的です。
このDVDは70歳を間近に控えた二人のレジェンドの素晴らしいパーフォーマンスをサポートが固めて実現できた、貴重な映像に仕上がっています。最初の単なるアルバム再現やナレーションを入れすぎてライブの興奮を断ち切るようなことなく、不安をほとんど吹き飛ばしてくれた快作です。
それにしてもQuadropheniaは迫力のある曲がそろってはいますが、曲調も似ていて、しかも陰で鬱なものばかり、それを最後に何故、Love Reign O'er Meでしめくくれるのか、分からなくなってしまいました。以前はトミーは分かりにくいがQuadropheniaは大丈夫と思っていましたが、トミーは分かりにくいことが分かりやすく、Quadrophniaは分かりにくいことすら分かりにくいのかなと頭の中が混乱しながら、久しぶりにフーの映像で満足感を得ることができました。