ザ・フー新譜「WHO」レビュー①

新譜発売から自宅に届いたのが12月10日で最初に聞いたのが14日でした。購入したのは日本版CDです。前作エンドレスワイアーから13年ぶりの新譜ということで、新譜を聞くのはIt's hardから3枚目となります。正直なところ今回は発売されるかどうかも含めて、全く期待していませんでした。さすがにロジャー、ピート二人とも75歳で、この年齢のミュージシャンに期待をしすぎるのは気の毒ですので。発売を予約することもなく、発売日が来たので、さすがに聞かないわけにはいかないのであわてて注文したような流れでした。

アマゾンのレビューを見ると好意的なものが多く、結構いいのかもと期待を持ちましたが、熱狂的なファンが応援を込めてのものではないかと、駄作の不安は消えることはありませんでした。

1回目聞いてみて、ロジャー曰く「クォドロフェニア以来の傑作」との触れ込みでしたので、その通り声は良くでているのは間違いないと感じました。この発言の意味は勝手な推測ですが、クォドロフェニアと同様のアルバムの出来というよりは、その頃と同じくらい上手に歌うことができたという意味は自分ではとらえています。ロジャーの声が出ているかどうか、アルバムごどにかなり差があるので、前作のシングルを聞いたときに感じた声のがっかり感は今回は感じなくてすんだのに一安心したのが、1回目の大きな感想でした。

そして今日、2回目を聞いてみました。積極的に聞きたかったというより、別に聞きたいCDがあったので、ついでという感じで、最初の印象が思ったよりも良かったので、確かめる程度の気分でした。

2回目で思いもよらず、曲によっては体を動かしたりしている自分に気づき、まだ曲名も知らないし、歌詞カードも目を通していない段階で、これはこれまでのフーのアルバムを聞いた中では起きなかったことです。どの曲がというよりは何曲も同じような状態になってしまいました。

色々と原因を考えて見ましたが、結論としては曲というよりはサウンドのせいだということになりました。今回、CDを聞くにあたってのステレオはオンキョーの安物のミニコンポです。それにヤマハの重低音スピーカーを組み合わせています。高級なステレオにはかないませんが、重低音の迫力だけはそれなりのものがあります。1軒家でないと近所迷惑な音が出ます。

今回のサウンドはこれまでと違い迫力があるだけでなく、バランスがとれていて、しっかりドラムの重低音が録音されていました。

考えてみれば、ある意味、禁句かもしれませんが、フーの一番弱いところは、やはレコーディングだったと思います。ライブでは申し分ないのに、その迫力がレコードに表れていないとこれまでも言われ続けてきました。しかもロジャーの声のコンディションは毎回違うし、サウンドクォリティがその都度違いすぎる。60年代は録音技術はのせいで仕方がないと思いますが、70年代以降は統一感がなさすぎでした。統一感という意味ではまだ60年代の方がまだ、ましかもしれません。仮にアルバムによっては曲はたいしたことがなくても、安心のツェッペリンサウンドU2サウンドピンクフロイドサウンド、ポリスサウンドストーンズサウンドがフーには残念ながら無いのです。

しかしながら今回のアルバムはサウンドクォリティが高く音がひきしまっていて、更にロジャーの声が冴えていて、これまでとは大分違う印象です。何が一番違うかというと、どうもドラムの低音がしっかり録音されていることにつきるような気がしました。

そこで過去のアルバムを同じステレオで聴いてみたところ、確かにドラムの音が紙か木を叩いているような感じがして、そのためサウンドとしての迫力が他のバンドと比べると少ないように感じます。特にこのようなステレオで聴くと良く分かります。あのフーズネクストでさえ、超名盤で人類の遺産であることに異議はありませんが、デラックスエディションで聞いてもドラムの低音はほとんど感じません。そこで70年代以降の曲も他も聞いてみましたが、その傾向はどれも、変わらず。直近のエンドレスワイアーもその前のシングル、 リアル・グッド・ルッキング・ボーイ、オールド・レッド・ワインも全く一緒でした。これがフーの伝統の音作りなのかもしれませんが、ラジカセやラジオなら問題ないのかもしれませんが、ステレオだと少し寂しい音と言えるのかもしれません。唯一のドラムの存在感を感じたのがユーベターユーベットでビル・シムジクの失敗プロデュースといわれるあの作品だったのは意外でした。

まだ1曲ごとのレビューはできませんが、少なくとも今回の作品は素晴らしいサウンドクォリティで音が引き締まっています。これまでのファンがどう反応するかどうか分かりませんが、何故このような音に仕上がったのか興味のあるところですが、ロックの達人は年を重ねても水を得た魚のような状態になると、どれだけの力を発揮するのか見せてくれたような気がします。まだ未聴の方は騙されたつもりで是非チャレンジしてみてください。