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デトロイトからのミニ・ツアー開始が目前に迫ってきて、これまでは来るといっても11月だからまだ先のこと、のんびり構えていたのが、最近、近づいてきたという実感で盛り上がってきました。私だけかも知れませんが。今日は来日公演に向けて新譜エンドレス・ワイアーの聴き方について、初心者向ということで書きます。エンドレスワイアーは日本では2006年11月発表ですので、もう新譜とはいえないかもしれませんが、フーにとっては今でも最新アルバムになります。2006ツアーは2006年6月から始まっていますので、ファンは5ヶ月間はまだ発表になっていない新曲を聴かされたことになります。私も2006年9月にMSGでは、全く初めて聴く曲が3曲もありました。今回の新譜の曲の中で抑えておきたいのは、Fragments, A Man In A Purple Dress, Black Widow's Eye, 2000years, Mike Post Themeの5曲+ Wire & Glass(ミニオペラ)になります。
私見ですが、この中で特に重要な曲がFragmentsになります。その理由はミニオペラを除いた4曲は歌詞は別として比較的分かりやすい曲です。他のアーチストも含めどこかで聴いたような曲もあるし、ひとつの完成した曲として数回聴けば、曲の雰囲気、構成、好みかどうか、判断ができます。しかしながらFragmentsは現代作曲家Lawrence Ballとの協作で、一般にイメージする曲の体をなしていません。ループするシンセでババ・オライリーを連想させますが、実際は全くといっていいほど似ていません。9月MSGでも2日間とも4曲目で演奏されており、その時初めて聴いた曲でしたが、2日間とも印象は「???????」でした。曲の展開も不思議な感じで、盛り上がりもあるようなないような、そして静かに曲の最後を迎える。後から読んだ歌詞も抽象的で何が何だか理解できません。本当にこれは完成した曲か、デモじゃないのかと思ったくらいです。このような曲を4曲目で聴かされると、次の曲が始まっても乗りについていけなくなったのがMSG公演が好印象につながらかった一つの原因かもしれません。
そういう印象が一変したのが2007年6月のグラストンベリーの演奏を聴いてからでした。最初にこの曲を聴いてから9ヶ月経っており、曲に慣れたのか、バンドの演奏自体が洗練されてきたのか、その時聞いた印象は9ヶ月前とは全く違い、曲の持つドライブ感というより、心地よいウェーブに包まれた感覚で最後まで、気分良く聴くことができました。ババオライリーにしてもWon't Get Fooled Againにしても緻密な構成で作曲をするピートですから、これもその作曲パターンの延長線上で、計算しつくされているような気がします。最初に聞いたときに問題作であると感じはしましたが、ただ60過ぎてチャレンジしただけでなく、新しい分野を開拓した成功作と評価してよいのではないでしょうか。部分部分で絡みつくギターも、非常に印象的で、メロディーをおって聴いていくよりも、音塊の変化(ヘンゲ)を感じながら、音の中を漂いながら聴くと効果的では。(何を書いているかわかりませんね。)
結局、言いたいことはFragmentsは傑作ではあるが、その良さを分かるには時間を要するので、できれば分かるまで聞き込んでからライブに臨んだことがコンサート全体を楽しむことにつながるということです。アルバムを聴くものももちろん良いのですが、Youtubeで2006年でなく、バンド演奏がよりなじんできていると思われる2007年の演奏を聴いてもいいでしょう。
ミニ・オペラについて先日書いた、「数十回聴いただけで理解できるものはないので、もし演奏された時どの曲が分かる程度に聞き込んでおけばよい」との内容に変更はありません。ただ、曲目がアルバムとライブでは違うので、その辺の説明をします。アルバムでは Sound Round、Pick Up The Peace、Unholy Trinity、Trilby's Piano、 Endless Wire、We Got A Hit 、They Made My Dream Come True、Mirror Door、Tea & Theatreの9曲構成になります。ライブではSound Round、Pick Up The Peace、 Endless Wire、We Got A Hit 、They Made My Dream Come True、Mirror Doorの6曲構成になります。Tea & Theatreはオペラとは切り離して、アンコールの最終曲として演奏されます。元々9曲で構成されていたのでなく、トミーのようなまだ曲数の多かったロックオペラを都合で9曲に減らしたもののうち、6曲を演奏するわけですから、この6曲はクイック・ワンのような短いけど楽曲のすべてというわけではなく、4曲演奏されるトミーメドレーに近いとみなすこともできます。そうなるとオリジナルの存在しないトミーメドレーを聞いて、概要を理解できる人がいないのと同じで、このメドレーを本当の意味で理解できる人は、原作でもじっくり読んで研究しようというほどの意気込みのない限り、いないのではと考えましたので、このようなコメントになりました。ダイアリーを書くために久しぶりにミニ・オペラをアルバムで聴きなおしみましたが、結構楽しんで聴くことができました。ミュージカル風楽曲のTrilby's Pianoだけはさすがに抵抗感を感じましたが。ピートの作曲能力はFragments同様、変容はしても未だ衰えていないことを再度実感できました。