THE WHO “Rock’s Outer Limits” ザ・フー

グラストンベリーのレビューを書くのに時間がかかっているうちに、ツアーは7月9日のヘルシンキを最後に終了してしまいました。個別に曲数等拾っていくと直後のロンドンでは2日続けて行われどちらもオペラ有り、The Real Me有りの大判振る舞い21曲演奏でした。6月29日のダブリンがオペラなし21曲。7月4日ノルウェーがフェス参加のためかオペラなし16曲。ストックホルムがオペラ有り20曲。デンマークがオペラ無し16曲。最後のストックホルムがオペラ無し20曲。最終的に今ツアーでのミニオペラは12回演奏され、17回演奏されなかったという結果になりました。ミニオペラを外すべきとツアー開始前に書きましたが、かなりのライブで外されましたが、すべてではありませんでした。しかも曲数をカウントしてみると以前書いたようにミニオペラがあったほうが、お得になるという皮肉な結果にもなりました。そのミニオペラをベースにしたミュージカルが今週末にNYで試験的に上演されるという展開も生み出しています。この後の動向も見逃せません。

今回のツアーは去年の6月、リーズ大学を皮切りに始まり、何度か間隔を置きながら13ヶ月間続くという、フーにとってはかなり長期のものになりました。その間にグラストンベリーを代表にいくつもフェスティバルに参加し、名演を残してきました。去年の11月には24年ぶりになる新譜を遂に発表したものの、ファン以外にまで話題になることは残念ながらありませんでしたが、完成度は別としてその労力の投入には目を見張るものがあり、特にミニオペラについては今後のミュージカル等の展開で、評価が変わってくるでしょう。個人的にはまた単独の曲で魅力を感じたものがあっただけに、それらの曲を捨ててもミニオペラにこだわるピートの姿には曲に対する並ならぬ思い入れを感じました。新譜の他の曲もいち早くセットリストに登場したMike Post Themeは一番早く、外れるようになり、Black Widow's Eyesもアメリカでは演奏されましたが今回のヨーロッパでは結局一度も演奏されませんでした。最後まで残ったのはA Man in a Purple DressとTea & Theaterとミニオペラだけでした。新譜以外では去年のヨーロッパではLet's See ActionやNaked Eyes, Magic Busも単発やそれほど続けて演奏されませんでした。去年のヨーロッパではほとんどの会場でロジャーが熱唱していたLove Reign O'er Meもはっきりチェックはしていませんが、確かアメリカ以降1回も演奏されなかったと思います。今回ヨーロッパではQuadropheniaからの曲が盛り込まれましたが、しばらくしたら外れてしまい、ロンドン公演のみファンの声を聞いたに違いなく、演奏されたにとどまりました。そんな曲があるか思うとReal Good Looking Boyは外れそうで外れず、最後までセットリストから完全になくなることはありませんでした。

長いツアーでしたが個人的にはウェブキャストもあった去年のヨーロッパツアーと去年9月のMSGまでが一番、楽しむことが出来ました。それ以降は情報がなかなか入らないのとロジャーの体調不良で心配することばかりで、決して大成功の華々しいツアー敢行というイメージは抱くことはできませんでした。チケットも完売でない会場も多かったし、新譜を発表した割には話題をさらうことはありませんでした。ポリスの27年ぶりの再結成で新譜無しにも関わらず、陰口一つ叩かれずの盛り上がりを目の当たりにすると、ポール・マッカートニーストーンズレッド・ツェッペリンに次ぐ、市場価値を有するフーとの間にU2、マドンナ、ピンクフロイドだけでなくポリスもいたのかというのが実感です。あの1989年のツアー発表でアメリカで大騒ぎになり、他のバンドのツアースケジュールさえ変更を余儀なくされた時や1982年のフェアウェルツアーでわが町でのコンサート開催を訴えビルの屋上に立てこもったファンのために、スケジュールを新たに組んだりするほどの、大物バンドとしての扱いは、これだけの活動をしても取り戻せませんでしたが、それはフーの責任というより、バンドの持つ宿命とロックミュージシャンに対する市場から突きつけられる加齢に伴う評価低減のようなもので、カムバックしてみたら新しいものを既に期待されない存在になっていたという事実に対面することになりました。それでもグラストンベリー最終日に当たり前のようにヘッドライナーを任され、他のフェスティバルでももちろんすべてヘッドライナーとして登場するだけでなく、観客を十分納得・満足・感動させるあたりは、同年代の他のミュージシャンやバンドにはできない芸当で、この点は特に評価に値すると思います。2000年以降のフェスティバル又はビッグイベントでヘッドライナーを務めなかったのは、Concert for NYC,ライブ8とあのロックオデッセイだけになります。

今回ヨーロッパツアーのフーがどういう状態であったかは、まだアンコールシリーズのDVDも一部発売してるだけで、注文もしていませんのでグラストンベリーしか材料がありませんが、前回ブログでも書いたようにザックのドラミングとピートの細かいコードワークが特に冴え渡っており、そしてハードな演奏も健在で、その他のライブも優れたものだったのではないかと推測されます。グラストンベリー直後のロンドン2公演はミニオペラを含め21曲演奏されており、結果的にはこの公演に行っておけばと悔やまれます。この2公演はグラストンベリーに近い演奏が行われたのではと想像しますが、The Timesのレビューでザックは良かったがオリジナルのメンバーについてはネガティブなコメントで5星中3の評価になっていて、最初の私のグラストンベリーを見た印象に近いことを書いていたのは興味深かったです。

そしてこれからのことですが、普段なら長い長い活動中断に入り、トミー40周年にあたる2009年までは目立った活動はないとうのが通例ですが、前にも書いたようにこれからは常にロードにいる状態を保つことが一番重要で、一日でも長く真の意味での現役でいつづける最善の方法と思いますので、そのことを是非実行してもらいたいものです。バンドのアナウンスメントからも絶対にあると確信していて、結局当初のツアー期間に行われず、すべての日本のファンをがっかりさせてしまった日本公演についてですが、11月開催の可能性は完全に否定されたわけではまだありません。常にロードにいることを実践できれば可能性は無くも無いと思いますが、当人達はおそらく、現時点でそんなことを考える心境ではないでしょう。

ザ・フー 2006 ツアー日程
ヨーロッパツアー(23公演終了)7/6のHedgestookを含む
北米ツアー第1レグ(18公演終了)
北米ツアー第2レグ日程(23公演終了10/29 Londn Roundhouseを含む)
北米ツアー第3レグ 16公終了(TCT含)
ヨーロッパツアー2007 現在30公演終了
5月16日 Lisbon ポルトガル Atlantico Pavilion
5月17日 Madrid スペイン Sport Palace
5月19日 Bilbao スペイン Bizkaia Arena
5月22日 Birmingham イギリス National Indoor Arena
5月23日 Sheffield イギリス Sheffield Arena
5月25日 Newcastle イギリス Metro Radio Arena
5月26日 Hull イギリス Hull City AFC
5月30日 Isle of Man イギリス Peel Bay Festival
6月1日 Swansea イギリス Liberty Stadium
6月2日 Southampton イギリス Rose Bowl
6月5日 Rotterdam オランダ Ahoy
6月6日 Paris フランス Bercy Arena
6月8日 Antwerp ベルギー Sportpalais
6月9日 Fulda ドイツ Messe Open Air
6月11日 Verona イタリア Arena Di Verona
6月13日 Munich ドイツ Olympiahalle
6月16日 Leipzig ドイツ Völkerschlacht-Denkmal
6月18日 Hamburg ドイツ Stadtpark
6月19日 Oberhausen ドイツ Arena
6月23日 Cheshire イギリス Knowsley Hall
6月24日 Glastonbury イギリス

6月26日 London イギリス Wembley Arena
6月27日 London イギリス Wembley Arena
6月29日 Dublin アイルランド Marley Park
6月30日 Cork アイルランド Live At Marquee
7月4日 Kristiansand ノルウェー Quart Festival
7月6日 Stockholm スウェーデン The Globe
7月7日 Roskilde デンマーク Roskilde Festival
7月9日 Helsinki フィンランド Hartwall Areena