THE WHO “Rock’s Outer Limits” ザ・フー

(最初の2曲、ICEとSEEKERは明らかにいつもより飛ばして演奏し、迫力も申し分ありませんでした。2曲とも最高のバージョンでした。そしてヘッドフォンの右側からシャカシャカと雑音のような音が常に聞こえてくるので、観客からが笛とともに何か楽器でも持ち込んでいるかと思っていたところ、それはザックのハイハットからのサウンドでした。ハイハットからの集音が大きいだけでなく、ドラムセットから音がかなりライブ全体、比率が大きくなっており、しかもザックのドラミングが最高の出来だったため、他のプレイヤーに集中することが難しくなってしまいました。それでも最初の2曲は文句のつけようがないほど、バンドを演奏を感じることができました。続く。)

とにかくザックのドラミングが聞いていて心地よいし、1曲目からロジャーが客にマイクを向けているのが少し気になるものの、バンド全体が最初から集中しているのがわかります。そして3曲目AAA、ザックのハイハットとシンバルが鳴り響く中、ピートが力を抜いたカッティングを聞かせている。そのためか曲全体のスパークス度は、最高のレベルまでは達していない気もします。ロジャーのボーカルは頑張ってはいるものの、決めのシーンでは思うように力を発揮できていません。全体的に好調とは言えないようです。去年のヨーロッパツアーの好調時とはさすがに比べようもありません。4曲目Fragmentsは最初聞いたときは選曲にがっかりして、引いてしまいましたが、何度か聞くうちに少し耳になじんできました。この日のピートのギターは、激しく演奏すると言うよりも、力を抜いたプレイが多く、こういった曲の部分部分で細かい演奏を聞かせる方に魅力を感じます。それでも出だしのボーカルパートが完全でないだけに、演奏を完璧とまでは言えません。5曲目のWAYですが、会場ではかなり盛り上がったようで、それなりの演奏にはなっていますが、この日のおとなしめのピートの演奏では、前面にギター出てくる場面がかなり少なくなってしまい、その点は残念でした。ギターのソロパートも何度聞いても、決まったとは思えません。5曲目のBehind Blue Eyesですが、前半の静のパートではギターの音色の変化が素晴らしく、後半のバンドの演奏を力強く、ギターも埋もれることなく文句はありません。ロジャーのボーカル入りそこねもあり、やはりボーカルの説得力が弱かったのは否めません。7曲目は観客お待ちかねのBaba O'Riley。出だしでロジャー、苦しみながらも迫力のあるボーカルを聞かせ、復調を感じさせました。ピートの細かいカッティングが更に冴えをみせ、パワーコードも織り交ぜられ、バランスの取れた演奏でした。インストパート前のピートのカッティングのアクションは瞬間的に戦闘モードに入ったようで、最高にかっこいいものでした。まだあれだけのアクションをみせるのに、感動し、驚きました。最終パートで細かいカッティングから荒々しいコードに変わっていくところは、コンサートのハイライトの一つだったと言えるでしょう。8曲目はRelay、去年のヨーロッパツアーで自分自身のお気に入りの曲の一つでしたが、久しぶりにまともな映像で見た演奏は、あの時何故あれほど感動したのだろうとお思わせるものでした。ピートのギターもバンドも全然悪くはないし、ロジャーは声の出が今ひとつながら、手拍子は決まっているし、それが原因とは思えません。この日というか、最近のピートのプレイスタイルとうまくかみ合わないのかもしれません。8曲目はYou Better You Bet、ポップでフーらしい曲ですが、ライブとなると各パートの見せ場少ないだけにコメントの難しい曲です。今回は中盤でギアチェンジがあり、演奏のレベルが一段上がりそれが最後まで下がることはありませんでした。ロジャーの演歌歌手のような最後の変わった歌い方も、その表れでしょうか。この曲は意外にも素晴らしい演奏だったと思います。そして9曲目はライブで最高の盛り上がりをいつも見せるMy Generation、少しスローに感じるテンポでしたが、最初の音から強烈な音圧で観客を圧倒していました。これが本当に42年前の曲とは思えないほどの、盛り上がりでした。ロジャーのボーカルも十分聞かせてくれたし、ピートもシングルノート、パワーコード、細かいカッティングを組み合わせた演奏で、見ごたえ十分でした。通常はスローテンポのMy Generationには抵抗があるものの、そんなことは全く気にならず、後半のインストパートも短い方だとは思いますが、これ以上望めないというほど素晴らしい演奏に感じました。ザックのドラミングに反応しながらギターを弾くピートが面白かったです。そのまま10曲目のWGFAへ突入。曲の盛り上がりという点では正直、分かりません。前半も中盤も後半もピートは硬軟織り交ぜ弾き、良かったと思うし、そのことに新鮮味も十分感じました。ロジャーのボーカルはMGに引き続き、良い状態でした。シャウトも決まりましたが、最後の最後のエンディングが少ししつこく感じました。もう一度、途中から演奏しなおすパターンがありますが、そちらの方がベターだったようです。ザックの最後の格好いいドラミングが印象的でした。

本編はこれで終わり、アンコールの1曲目はThe Kids Are Al'right、ピートの随所でみせるカッティングは魅力を感じましたが、基本的に歌できかせる曲のため、ロジャーのかすれた声では伝わるものがどうしても弱くなってしまいました。それでもアンコール1曲目としてこの曲の選択は正解だったと思います。そしてトミーメドレーの1曲目、Pinball Wizard、この日はピートの軽快なカッティング冴えており、全編でそれを聞くことのできるこの曲の出来栄えが悪いはずも無く、とにかくギターの音色が心地よいです。それにザックのドラミングが重なり、今まで感じたことがあったかというほど迫力を感じさせるパートもありました。メドレー2曲目、Amazing Journey、ここではその気になれば出来るといわんばかりに、ピートがヘビーな演奏を十分聞かせてくれる。とにかくダイナミックの一言です。曲の後のインストパートはかなりの緊張感を感じます。ロジャーのタンバリンの微妙な音を良く録音されており、演奏に一役かっているのが分かります。次はSparks、激しさはあるものの、細かい演奏をピートが多用しているため、迫力だけから見ると足りないようにも感じますが、この日のピートのプレイスタイルを強く感じさせるものとなっています。トミーメドレーのラスト、See Me Feel Me、この日のピートは良くも悪くも暴走しないので、そしてロジャーもこの曲の最後でマイクを客に向け歌わないといったミスをなく、演奏は大きくて深いものになりました。それでもエンディングはやはり、WGFAと一緒で少ししつこい終わり方のような気がしました。もう少しエンディングに一工夫必要と感じましがたが、何度か見ても並みの演奏なのか名演なのか判断できませんが、これだけ気にさせるということは、やはり名演のひとつである証拠であるとしておきましょう。最後の曲はニューアルバムからのTea & Theater、ピートのギターをバックに、ロジャーが最後の声をふりしぼり、熱唱し約90分のグラストンベリーでのショーは終了しました。

全体をとおしてロジャーはパーフェクトではありませんが、北米ツアーで2度もダウンし、ベローナでも声がでなくなるようなコンディションを考えれば、健闘したと思います。今回のダウンロードしたビデオを見たときにまず感じたのが、高音質の他にザックの素晴らしいドラミングとピートのギターの大人しさでしたが、数回見てピートは暴走するような演奏はしていないものの、細かいカッティングや音色に非常にこだわった演奏をしており、視点を変えると素晴らしい演奏の曲がいくつもあることに気づかされました。最近のライブをほとんど見ることができないため、いつからこのようなスタイルに変わったのか、今回だけだったのか,今まで自分が気づかなかっただけなのか検討もつきませんが、少なくとも去年のヨーロッパツアーでは似たようなライブはなかったのではないかと思います。特に2000年の再結成以来のピートの激しい演奏、アドリブとそれについていくリズムセクションとの融合と衝突が、フーのライブの醍醐味になっていただけに、これを見る限りスタイルが変わってきていると感じました。あとザックだけでなく、ピノとのリズムセクションが素晴らしく安定感があり、サウンドの質を高いものにしていて、それにピートが技で対抗していると言えるかもしれません。このショーのレーティングをつけるとすると、迫力だけでなくテクニカルな側面にも注目すれば、バンドの多面性を見せてくれた今回のライブはやはり最高のレーティングに値すると思いました。

ザ・フー 2006 ツアー日程I
ヨーロッパツアー(23公演終了)7/6のHedgestookを含む
北米ツアー第1レグ(18公演終了)
北米ツアー第2レグ日程(23公演終了10/29 Londn Roundhouseを含む)
北米ツアー第3レグ 16公終了(TCT含)
ヨーロッパツアー2007 現在30公演予定
5月16日 Lisbon ポルトガル Atlantico Pavilion
5月17日 Madrid スペイン Sport Palace
5月19日 Bilbao スペイン Bizkaia Arena
5月22日 Birmingham イギリス National Indoor Arena
5月23日 Sheffield イギリス Sheffield Arena
5月25日 Newcastle イギリス Metro Radio Arena
5月26日 Hull イギリス Hull City AFC
5月30日 Isle of Man イギリス Peel Bay Festival
6月1日 Swansea イギリス Liberty Stadium
6月2日 Southampton イギリス Rose Bowl
6月5日 Rotterdam オランダ Ahoy
6月6日 Paris フランス Bercy Arena
6月8日 Antwerp ベルギー Sportpalais
6月9日 Fulda ドイツ Messe Open Air
6月11日 Verona イタリア Arena Di Verona
6月13日 Munich ドイツ Olympiahalle
6月16日 Leipzig ドイツ Völkerschlacht-Denkmal
6月18日 Hamburg ドイツ Stadtpark
6月19日 Oberhausen ドイツ Arena
6月23日 Cheshire イギリス Knowsley Hall
6月24日 Glastonbury イギリス

6月26日 London イギリス Wembley Arena
6月27日 London イギリス Wembley Arena
6月29日 Dublin アイルランド Marley Park
6月30日 Cork アイルランド Live At Marquee
7月4日 Kristiansand ノルウェー Quart Festival
7月6日 Stockholm スウェーデン The Globe
7月7日 Roskilde デンマーク Roskilde Festival
7月9日 Helsinki フィンランド Hartwall Areena