THE WHO “Rock’s Outer Limits” ザ・フー

1曲目のFRAGMENTSはババオライリーのループ音を明らかに連想させる曲作りになっていますが、その箇所以外は特に共通点を見出すことはできません。姉妹曲というより完全に別の曲と言ったほうがよさそうです。この曲の演奏箇所(シンセを除く)はほとんどがピートと一人で行っており、背景は良く分かりませんが、メンバーの手配ができなかったのか言うより、自分でデモを作っているうちに手直しの必要がないと判断したのでしょう。それにしてもこれだけの作品を自分ひとりで作り上げることができるとは大したものです。
私にとってはサイコデリリクトで聞き覚えのあるメロディで始まる曲ということのほうがより重要でした。あのピート・タウンゼントが1993年に発表してセールスの悪さとツアーの失敗で、レコーディング活動からの引退を発表した契機となった作品。そのリベンジを果たそうかのようなオープニングは、創作活動を再開しようとする決意にも聞こえます。
そのサイコデリリクトですが、少し前に出たベスト盤で聞いたとき、他のアルバムと比べると音がシンプルすぎて、アルバムとしてはやはり失敗作になるのではと感じました。発売当時、毎日聞きましたが他の曲では興味を引くものがいくつかありましたが、肝心のENGLISH BOYは何十回聞いても好きになれませんでした。最大のセールス上の失敗はナレーションを入れてしまったことにあるのは間違いないですが、音作りにはやはり失敗したと思います。ライフハウスの延長線上にある重要な作品の位置づけであったはずですが、それに対する評価が得られなかったのは特にショックを受けたのでしょう。曲作りやプロットには目を引くものがあるので、マスタリング等で再評価を受ける可能性は残っています。
FRAGMENTSはそれでも実験曲だと思います。何かに似せていますが、実際はどの曲にも似ていない、全く新しい曲で、この曲一つからもアルバムに対する意気込みが感じられます。メロディラインでは曲の構成を重視しています。WGFAのように。9月にNYでライブを見たときは2日間ともこの曲が演奏されましたが、その時の印象は最初のシンセの箇所は興味を持ちましたが、後は散々で印象に残らなかった曲ワースト1か2の評価でしかありませんでした。
実験性が強いため曲の構成が分かりにくいのとクライマックス部分があるのかないのか分からないのと、最後に唐突にTO YOUと歌いながら終わるエンディング。(未だにこの点だけかは必ずあると言い切れませんが)初めてその場で聞いただけでは理解できないのが当然かもしれません。アルバムで何度か聞いて、もっと聞き込みたくなる魅力を持つ曲と最近は思うようになりました。少なくとも最近3歳になったばかりの息子はこの曲が気に入っているようです。ミニオペラでも同じ主題の曲があり、その関連性についても気になるところです。
2曲目のA MAN IN A PURPLE DRESSは、まだ歌詞もよく読んでいませんが宗教的なモチーフを題材としているようで、他にも社会性の強いメッセージのある曲があるので、発売してしばらくで、ストーンズの新譜の曲であった様な大きな反響があるのではと期待していましたが、それぞれのレビュー内で取り上げられるものの、それ以上の展開は今のところないようです。
ギターのみの演奏にロジャーの歌をのせただけの曲ですが、妙に説得力のある曲です。ロジャーが新境地を開いたといってよいでしょう。自分のことをINTERPRETORと表していますが、フーの中での存在感を示す、最高のコピーではないでしょうか。他のレビューで引用しているものも見るくらいです。ピートがボーカルを取っていたら、達成できなかったほどの強さと神々しさを兼ね備えた曲に仕上がりました。
ロジャーのボーカルですが、新境地を開いているだけでなく、全般的にかなり良い出来だと思います。声量も迫力も十分であるのに、一部のレビューではあまり評価されていないのが可哀想です。確かにミニオペラでは一部、完全ではないものの、これがもしダメだというなら前2作はとてもじゃないけど聞けない代物になります。
3曲目のMIKE POST THEMEはヨーロッパツアーから毎回演奏されていた曲なので、新譜の中では一番なじみのある曲です。ただ何度も聞きすぎてすこし飽きてき始めた印象もありましたが、アルバムでは迫力のあるバージョンに仕上がっていて、ヘッドホンで聞いていると思わず叫びたくなるような、暴れたくなるような他に似た曲はあまり見つからないが、いかにもフーらしい曲に仕上がっています。
新譜の中での曲の並びが少し気になるものの、これがほとんどピート一人で仕上げるとは驚きです。ライブでは飽き始めたコーラス箇所はアルバムではきれいに仕上がっています。ライブでのコーラスはどうしてもラフになるので少し工夫が必要だと思います。
レビュー4回目はこれで終わります。まだ曲がたくさん残っている上に、更新間隔がどうしてもあいてしまうため最後までたどり着くかどうかもわかりませんが、これは単なる素人の独り言のつもりで読んでください。
北米ツアー第2レグも予定通り進行して、第1レグよりもロジャーの声は安定しているようです。ほぼ同一セットリストで突っ走っていますが、新曲を減らそうとしない根性は評価できます。オフィシャルでラスベガス公演の一部アップされているようなので、現況をチェックしようと思いながらなかなか時間がありません。
北米ではライブが更に追加されましたが、日本公演についてはまだ発表されていません。公演は確実だと思いますが、4月以降になってしまうと仕事の都合で、見に行けるかどうか微妙なため、できれば3月までに来日してもらいたいと密かに祈っています。
(New Album Review part 4終了)
ザ・フー 2006 ツアー日程
ヨーロッパツアー(23公演終了)7/6のHedgestookを含む
北米ツアー第1レグ(18公演終了)
10/29 London Roundhouse
北米ツアー第2レグ日程(23公演中10公演終了)
Nov 04, 2006 Los Angeles Hollywood Bowl
Nov 05, 2006 Los Angeles Hollywood Bowl
Nov 08, 2006 San Jose HP Pavilion
Nov 10, 2006 Las Vegas Mandalay Bay
Nov 11, 2006 Palm Springs Indian Wells Tennis Garden
Nov 13, 2006 Salt Lake City Delta Center
Nov 14, 2006 Denver Pepsi Center
Nov 17, 2006 Dallas American Airlines
Nov 18, 2006 Houston Toyota Center
Nov 20, 2006 Fort Lauderdale Bank Atlantic Arena
Nov 22, 2006 Atlanta Gwinnett Center
Nov 24, 2006 Atlantic City The Borgata
Nov 25, 2006 Philadelphia Wachovia Center
Nov 27, 2006 Hershey Giant Center
Nov 28, 2006 Bridgeport Arena at Harbor Yard
Dec 01, 2006 Uncasville Mohegan Sun
Dec 02, 2006 Boston TD Bank North Garden
Dec 04, 2006 Toronto Air Canada Centre
Dec 05, 2006 Grand Rapids Van Andel Arena
Dec 07, 2006 Omaha QWest Center
Dec 08, 2006 St.Paul Xcel Arena
Dec 11, 2006 Columbus Value City Arena