THE WHO “Rock’s Outer Limits” ザ・フー

3月4日の6時からの公演をまず見ました。席は14列目でした。ブロードウェイ版は見ていません。以前に書いたようにロンドン公演を97年に行った時に見たかったのですが直前に終演していましたので、やっとで念願がかないロックミュージカル・トミーを見ることができ、満足できました。確かブロードウェイ版の終了後、全米を回っていたのを記憶しているので、その時はブロードウェイ版を少しセット等、軽くしたのではないかと思いますが、基本的にはブロードウェイ版と同じストーリーだったはずです。今回はブロードウェイとは違うアプローチで新たに作られていたトミーでした。パンフレットを見ると去年オランダ、ベルギーで公演したものと同じで配役もかなり同一人物になっているようです。イギリスでの去年の公演もおそらく、バンドの位置やフィナーレ等一致しているので、同じものだと思います。今回はアジア公演ということですので、日本の後オーストラリアへ移動することも考えられます。今回のプロジェクトのオフィシャル・ページが調べた限りではありませんので、そういうものあった方が、初めて見る場合、とても参考になるのでいいと思うのですが。ストレンジデイズに特集があったので、それで予備知識を得ることができ、当日を迎えました。さすがに最初の土曜日の夜公演とういうことで、お客さんの入りは悪くなかったですが、それでも9割まではなかったと思います。いかにもロックファン風の人もかなりいましたが、ミュージカルファンの年配の客も見かけました。とにかく新しいミュージカルが来れば必ず足を運ぶとか、元々はブロードウェイで上演され、トニー賞まで受賞したとなれば、行くのが当然といったファン層もいるようです。元々ザ・フーというイギリスのバンド作ったアルバムを基に作られたミュージカル以上の知識の無い客がかなりの数いたように見受けられました。
私自身ミュージカルと呼べるようなものを見た経験は3回位しかないので、正当な評価をする資格はないのですが、それらと比べて見劣りはしませんが、今回のトミーは特筆すべきものとは残念ながら私には映りませんでした。もちろんOVERTUREが始まったときは感激したし、バンドの演奏もミュージカルボリュームなのか小さく感じましたが、迫力は十分感じられました。最も重要なトミーの青年役は見た目といい、演技といい、歌唱力も素晴らしく適役だったと思います。最後にトミーが独りになり、ブロードウェイ版は家族の下に帰って行ったのに対し、今回は音楽そのものに帰結するような結末はそもそも本来の設定があったのかどうかでさえ、曖昧で聞き手のイマジネーションに委ねるこのストーリーに合っていると思いました。フィナーレの高揚感は圧倒的で映画を見たときに感じたようなしらけた雰囲気はありませんでした。正にシーミーフィールミーらしい演出でした。それ以外のハイライトシーンは、冒頭の部分でスクリーン越しに物語が展開する箇所やアシッド・クイーン、ピンボール・ウィザードは前半のハイライトと言えるし、後半ではアイム・フリーの幻想的シーン、サリー・シンプソンのコミカルなシーンそしてラストでの盛り上がり、アンコールでのスタンディングを伴った合唱、感動的なミュージカルの要素は十分備わっていると言いたいところですが、それでも何かが足りなかったような気がしてなりません。それはひとつにはミュージカルそのものが持つ質の高さと一律さが全面を通して貫かれている印象も持てなかったこと。例えば他にハイライトになるべき曲、フィドル・アバウトや従兄弟のケヴィン、トミーズ・ホリディ・キャンプ等まだ改善の余地はあるように感じました。あれだけのエンディングができるのに、間の曲でそのレベルまで迫るシーンなかったのが残念です。またトミーはアルバムやライブで聴くと曲と活き活きとした演奏のため、内部にある輝きを常に感じながら聞くことができますが、ミュージカルだとその一面は当然後退するため、ストーリーの持つ心象風景を描くような抽象的なものや、難解さが代わりに全面にでてしまう傾向があるようです。後半部分で何度も出てくる子役トミーの存在には物語が持つ、もうひとつの側面、心象描写を強烈に焼き付ける効果を持っていて、今現在でもどう表現してよいか分かりませんが、不思議な魅力を感じてしまいました。続きは後日書きます。