THE WHO “Rock’s Outer Limits” ザ・フー

U2の新譜はボノ自身もインタビューで語っているように、アルバムの完成度という意味でフーズネクストを意識して作成されたようです。アルバム自体は聴いていませんがスヌーザー誌に載せられたインタビューはフー特にフーズネクストのことが語られていて大変興味深く読みました。U2は私にとってはデビュー時、冷静かつ熱狂的なサウンドがフーとの関連を強く感じたものでしたが、特にそのことを語られたこともほとんどないし、U2自体もフーについて特に述べたこともほとんど読んだことはありませんでした。Rock’n Roll of Fameにフーが入ったときにボノがプレゼンターをしていたので、やっぱりファンなのかなと思った程度でした。
しかしながら今回のアルバムはLove Song to The Whoと紹介して演奏するほどの熱の入れ方でインタビューでもフーとフーズネクストに対する思い入れが語られている。フーのパワーと繊細さについて、ファンにとっては当たり前のことだが注目しているようだ。フーズネクストについては、アルバム完成のためにできのよい曲惜しげもなくが捨てられたことが、完成度の高さにつながっていると考えているようだ。WGFAはラジオライブでのU2のカバーは以前も書いたとおり面白かったですが、その曲が包含している政治性にも一言持っているようです。フーとU2はどちらも真摯なバンドであることとに少なくとも共通項があるわけですが、一番の違いは音楽ビジネスの成功の度合いでしょう。フーのように迷走せずに、エネルギッシュな活動をデビュー25年以上経っても続けている。ロックの王道の冠を授かったかのように、これからも迷いはないかのように思えます。
ピート・タウンゼントもフーはU2と比べるとローカルバンドであるかのように発言していました。確かに欧米のフーの人気は高いとよく言われますがヨーロッパのツアーも独仏、北欧のみに限られているし、英を除くヨーロッパでは再活動後(1999年)以降も全くライブを行っていません。それにしても人気が特定の国、特定の層に集中しているようです。アメリカでもニューヨーク近辺での人気が圧倒的に高いようです。フーが日本では人気がないといわれたのは(現在それが変わったとの確証はありませんが)決して日本のみの特殊性ではないと思われます。
将来的にどうフーが位置付けられるのかも分かりませんが、パンク出現後最もその音楽の近似性から最もその時、名をあげられ、またバンドによってはフーを超えたともいわれながら、それから四半世紀経った今でも評価は微動だにしません。それほど簡単に超えられるハードルでもないし、近づくことさえ許されない聖域にいるバンドのひとつであることは間違いないと思います。U2にしても確かにロックビジネス界で現役ロックバンドとして最高のバンドの称号を得ているのは間違いありませんが、フーの多面性を考えるとU2でさえその一面の後継者であるとしかいえないでしょう。(もちろん当人達もそれを目標にしているわけではないと思いますが。)日本のバンドではブルーハーツにもフーのイメージが重なってしまいます。特にリンダリンダはSEE ME FEEL MEやBEHIND BLUE EYESが良い意味でベースになっているような気がして仕方がありません。(曲の強弱のつけ方とか特に。)
そういったフーのスピリットを持ったバンドとも一線を画するものは、客観的なフーの評価と自分で刻み込んだ記憶の中で複雑化していますが、確かに存在しているのです。