THE WHO “Rock’s Outer Limits” ザ・フー

ピート・タウンゼント
ジョンのプレイは以前から日本でも一目置かれていましたが、ピートは気の毒なほど過小評価されていました。雑誌に「テクの無さをアクションでカバーしたギタリスト」と紹介してあるのを見た時は、さすがに温厚な私でも切れそうになりました。今回のライブでの演奏に対する観客からの賞賛は自慢じゃないですが、私が予測した通りになりました。以前と比べただ上達しているだけでなく、「ロックンロールを体現している」と言われた渾身のギタープレイが全く損なわれない状態で、59歳にして日本のファンの前で披露してくれたことは長年待っていたファンにとっては最高の贈り物だったでしょう。
ロジャー・ダルトリー
ロジャーもメロディを重視して歌うボーカルではなく、フーのダイナミック演奏に乗せながら歌ったり、シャウトするボーカリストとして最高の役割を果たしてくれました。横浜の競技場でロジャーの太い声が十分に響きわったのを聞いた時は、コンディションを整えてきてくれたことに感謝の念で胸が一杯になりました。
ザック・スターキー
ザック・スターキーに対しては、ネガティブなコメントを探すのが大変なほど、彼のプレイを見た人のほとんどから絶賛されています。事前に彼のプレイが素晴らしいことを書いていたのは一体誰だったのかは、もうしつこいので言いませんが、キース・ムーンのドラムを再現し、さらに自分流のプレイも加えて文句のつけようがありません。2000年tourの時よりも明らかにバンドの中での存在感が増しています。下手すると曲によってはキースよりも上じゃないかというコメントも見たりするくらいです。
ラビット、ピノ・パラディーノ、サイモン・タウンゼント
この3名については申し訳ないですがじっくり見る余裕は全くありませんでした。ラビットについては本人のダイアリーを見ると演奏をその都度工夫したり、フーと係って20年以上になりますのでメンバーの一人といってもいいくらいの、貢献をしていると思われます。ピノについてはあのフーサウンドを作り上げた一員であるということだけで、賞賛に十分値すると思います。彼のinterviewで「ジョンの演奏の中にはどうやってプレイをしているのか、分からないパートがある。」と語ったほど存在の大きなベーシストの代役を果たすことのプレッシャーは、計り知れないものがあるでしょう。サイモン・タウンゼントは小人数編成では、今回が2回目の参加になるわけです。考えてみると大編成バンドやピートの状態が悪い時を除けばフーにギタリストが二人いた時代など無かったわけで、兄弟とはいえ、二人いることに異議を唱えるのファンがいてもおかしくは無いはずですが、私は聞いたことはありません。今回のライブでもピートのソロを代わりに弾くとか気になるプレイはありませんでした。ジョンがとっていたコーラスの役割とギターについては完全にピートのサポートに徹していて、それがピートへの負担を軽くして、今の好演につながっているのかもしれません。